メルカリの売買で確定申告は必要ですか?

2018年8月21日

上場も果たし、さらに話題となっているメルカリ。手軽に私物を売買できるとさかんに取引が行われていますが、たくさん売買すると心配になるのが確定申告が必要がどうかということ。メルカリやオークションなど、個人間売買にはどんな決まりがあるのでしょうか?
日米で公認会計士の資格を持つ森井じゅんさんに詳しくお聞きしました。
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メルカリでの売買で確定申告は必要なのでしょうか?

メルカリは、スマホさえあれば誰でも簡単に取引ができるアプリで、その手軽さから日本最大のフリマアプリとなっています。
「お小遣い稼ぎにメルカリ」、「メルカリで稼ぐ方法」などのトピックを目にしますが、やはり注意したいのは、税金はどうなるのか、確定申告は必要なのか、といったところでしょう。
結論から言えば、確定申告が必要になる場合と必要ない場合があります。
そもそも確定申告とは、1月1日から12月31日までに得た所得を確定し、申告することです。 一言で所得といっても所得には10種類あり、それぞれ計算方法や取り扱いが異なります。
メルカリでの売買により利益は、何をどう売るかによって、譲渡所得、雑所得、事業所得のいずれかに分類されます。
ざっくりと言えば、自分が使うものとして所有していたものを譲渡して得た所得は「譲渡所得」売る目的で仕入れたものを販売して得た所得は「雑所得」です。さらに開業届等を提出し、事業として売買を行って得た所得は「事業所得」となります。
しかし、これらの所得について全てが課税対象となり、確定申告が必要になるわけではありません。また、同じような所得を得た場合でも、そのほかの所得の状況等により確定申告が必要になる場合とならない場合があるのです。

確定申告しなくていいケース、しなくてはならないケースとは?

メルカリで多いのは、家庭の不用品を譲り対価を得るケースでしょう。つまり、衣服や家具といった通常生活に必要なものが要らなくなったので、他人に譲りお金をもらう、というものです。こうした資産は生活用動産の譲渡と呼ばれ、その所得については課税の対象外であり、確定申告は必要ありません。
「生活用動産」ではない資産の譲渡、転売目的の売買については申告が必要な場合と不要な場合があります。
会社員やアルバイトなど、給与所得のみといったケースでは、通常、会社が行う年末調整という手続きにより税金計算は完結します。そのため、大部分の方は、確定申告は不要です。そういったケースでは、メルカリで譲渡所得や雑所得を得た場合でも、合計20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。
専業主婦などで他に所得がない方であれば、所得38万円がラインになり、それを超えると確定申告が必要となります。
また、事業として事業所得を申告する方については、基本的に毎年確定申告を行う事になり、譲渡所得が多寡にかかわらず確定申告を行う事になります。

例えば、会社員の人が20万円超の利益を得た場合はどうなりますか?

≪譲渡所得≫
上でお話したように、家庭の不用品の売買であれば20万円超の利益が出た場合でも税金はかからず、確定申告の必要はありません。
一方、「生活用動産」と認められない資産の譲渡については、その資産の所有期間が5年以内か、5年超か、で取り扱いが変わってきます。
5年以内の所有については、譲渡した価額からその資産を取得した費用や売るためにかかった費用等を差し引いたものを計算します。5年超の所有については、上記の計算の半分です。これらを合計し、50万円の特別控除額を超えた部分が課税対象の譲渡所得となります。
例えば、3年前に100万円で買った貴金属が160万円で売れたというケースを考えてみましょう。売るための費用はかからなかったものとします。その場合、差引60万円について、50万円の控除額を超えた部分10万円が課税対象となります。
この10万円の譲渡所得については、20万円以下であるため、会社員等であって年末調整で税金計算が完結する方については、確定申告は必要ありません。

≪雑所得≫

ここではいわゆる転売のケースを想定します。売却価額から仕入れた費用や売るためにかかった費用を差し引いたものが雑所得になります。この場合には、譲渡所得のような50万円の特別控除はありません。
一年間の転売の結果、雑所得が20万円以下である会社員等で、年末調整で課税関係が完結する場合は、確定申告は必要ありません。
ただし、譲渡所得であれ雑所得であれ、会社員であっても医療費控除等を受けるために確定申告を行う場合やそのほかの理由により確定申告を行う場合には注意が必要です。
確定申告を行う場合に、都合のいいものだけ自分で選んで含める事はできません。少額であっても、メルカリで得た所得も所得として含める必要があります。

≪事業所得≫

事業として取引をしている方は基本的に事業所得として、収入から必要経費を差し引いて確定申告を行っているでしょう。こうしたケースの多くは税制上メリットの大きい青色申告を選択し、毎年確定申告を行っているものと思います。そしてもちろん確定申告を行う上で、譲渡所得が小さくてもその所得を申告に含める必要があります。

生活用動産とならないものといいますと?

生活用動産とは家具、什器、通勤用の自動車、衣服などといった生活に必要な動産をいいます。生活に必要なもの、と言っても様々で個々の状況によっても変わってきますが、家庭で日常の生活に必要であり実際に使用するもの全般と考えていただいて差し支えないでしょう。
ただし、貴金属や骨董、宝石などのように必ずしも生活に必要とは言えないものや、1個あるいは1組の価額が30万円を超えるいわゆるぜいたく品は生活用動産とはなりません。趣味のための楽器や道具も生活用とは認められないケースが多いです。
確かに、不要となるものの中には、趣味関連のものや、高級ブランドのバッグなどひとつ30万円を超えるものも少なくないでしょう。しかし、使用目的で購入したけれど使わなくなったから売ろう、という場合には上記のように、特別控除50万円があるため、最終的には課税対象の譲渡所得はゼロとなり、確定申告が不要となるケースが多いです。

ちなみにメルカリの取引に古物商営業許可は必要なのでしょうか?

本来、営利目的で中古品を買い取って売るケースでは古物商許可が必要になります。つまり、メルカリなどを使用して、中古品を仕入れたり、仕入れたものを継続的に販売したりするためには古物商が必要です。また、メルカリやリサイクルショップで新品として売っているものを仕入れたとしても、古物にあたることがあり、やはり古物商の許可を取得する必要があります。これは古物営業法で明確に規定されていて、許可証申請の窓口は警察署です。
ひとつ注意したいのは、経済産業省の制定している“インターネット・ネットオークションにおける「販売業者」に係るガイドライン”です。つまり、この「販売業者」に該当するのであれば、一定のルールに従わないといけません、というものです。ルールとは具体的には、情報の広告義務や古物を扱う場合には古物商の許可が必要、といったものです。
このガイドラインでは、販売業者にあてはまる可能性として、「一ヶ月に200点以上の出品」や「落札額が過去一ヶ月に100万円以上」などという例が挙げられています。
ここで、ガイドライン上の「販売業者」に該当しなければ、古物商は不要か、という点に注意が必要です。
まず、営利目的で中古品を売買し、それを継続的に行うような場合、原則として古物証許可が必要です。そのうえで、ネット・オークションにおける「販売業者」に該当するのであればそれに従う必要があります。
「一ヶ月に200点以上の出品」や「落札額が過去一ヶ月に100万円以上」と言った要件に該当しないからといって古物商が不要、というわけではないので注意しましょう。

その他、個人売買に関して気をつけることなどありますでしょうか?

実際、メルカリなどを使用して、中古品の売買を継続的に行って利益を上げている方の中には、古物商の許可を取っていない方もおられます。無許可で営業した場合は、古物商営業法違反として3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される場合があります。
また、 多くの人が誤解しているのですが、所得税の確定申告(国税)と、地方自治体への住民税の申告(地方税)は異なります。つまり所得税の申告は不要でも住民税の申告が必要なケースがあるのです。
具体的には、会社員の方で、給与以外の所得が20万以下で確定申告不要でも住民税の申告は必要です。他に所得がない38万円以下の所得のケースも同様です。申告方法などはお住まいの市区町村に問い合わせてみましょう。

この記事のライター

森井じゅん

公認会計士/米国ワシントン州公認会計士/税理士/FP。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行っている。

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