企業年金の受け取り方、「年金受取」と「一時金受取」はどちらが得?

2019年1月19日更新

前回は、企業年金における年金受取と、それに代わる一時金受取、および、年金受取を選んだ場合の、企業年金におけるリスクをご説明致しました。今回は、年金受取と一時金受取の税制の違いについてご説明させて頂きます。
まず、年金で受け取る場合は、その所得は雑所得として課税されます。ただ、公的年金等控除が適用され、年金による収入金額から一定金額が控除され、雑所得が決定されます。
仮に、年金受け取り時の年齢が65歳以上で、DB年金などの企業年金を含めた公的年金等の収入金額の合計額が350万円の場合、
350万円×75%-37.5万円=225万円
が雑所得の金額となります。
なお、雑所得は総合課税ですので、他の所得がある場合は、それらを合計して所得金額を算定して、所得税が計算されます。
一方、一時金で受け取る場合は、あたかも退職金を受け取るのと同じですので、退職所得として課税されます。まず退職所得にも控除できる退職所得控除があって、勤続年数20年以下部分については1年あたり40万円、勤続年数20年超の部分については1年あたり70万円が控除されます。この金額が控除され、かつ、控除後の金額の1/2倍が退職所得の金額となるわけです。
例えば勤続40年で退職する場合、40万円×20+70万円×(40-20)=2,200万円が控除されるので、例えば、一時金の額が2,500万円の場合は、(2,500万円-2,200万円)×1/2=150
万円が退職所得となり、これに基づき所得税が課税されるわけです。退職所得控除があり、かつ、控除後が1/2倍となることから、かなり税制面で優遇されていることがわかります。
また、退職所得は分離課税ですので、他の所得があっても、それらと合算しないで所得税額を計算されるので、かつ、所得税は累進課税ですので、分離で課税される方が税率を低く抑えることができるわけです。それだけ、退職所得は優遇されているわけですね。
今までの議論をまとめると、
・年金で受け取る方が、一時金で受け取るよりは、受取の合計額は多い。ただ、その違いはさほど大きくない。
・年金で受け取る場合は、企業年金との関係が続くため、母体企業の経営悪化などによる給付減額や企業年金の解散などのリスクが残る。
・一時金で受け取ると、退職所得として所得税が課税されるので、所得控除や税率で恩恵を受けることができる。
年金が良いか、一時金が良いかを一概に言うことはできませんが、これだけを見ると一時金として受け取る方が無難のように見えるわけです。もちろん、一時金で受け取ってしまうと、老後の定期的な収入が少なくなるわけですので、一時金として受け取った額をうまく取り崩していって、あたかも年金を受け取っているかのようにする方法もあるわけです。
企業年金については、アクチュアリーやDCプランナーなどの専門家が詳しいかと思います。長期勤続後の退職時には、企業年金の受け取り方について、このような専門家に相談することをお勧め致します。

この記事のライター

添田享

日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会検定会員。1級DCプランナー。アクチュアリー・ゼミナール講師。大学、大学院で数学を専攻し、大学院修了後、アクチュアリー候補生として信託銀行に入行。その後、証券会社、生命保険会社などで一貫してアクチュアリー業務に従事。
アクチュアリーの中でも、生保アクチュアリー、年金アクチュアリー双方で業務経験が豊富である数少ないアクチュアリー。現在は、アクチュアリーの業務経験を活かして、アクチュアリー試験などの金融関連資格の講師、数学の講師など幅広い分野で活躍。

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