
37年間勤めてきた会社を去るものあと2ヵ月ほどとなりました。
有給休暇も全て使おうと考えているので、実際に出勤するのはあと30日少々です。
一緒に仕事している仲間たちとの時間は、退職すれば永遠に戻ってきません。
多分、9割方の仲間たちとは、退職と共に永遠の別れになるでしょう。
だから、仲間たちと一緒に仕事をする時間を今は大切にしながら日々働いています。
そう言えば、「定年後」を書いた楠木新氏のコメントの中に、退職して初めて会社という組織を懐かしく感じるものだ、と書いてあったのを思い出します。
考えてみれば、生まれも育ちも、性別も年齢も違う人たちが、決められた時間と場所に集まって、目標・目的を同じくして行動するというのは一つのロマンかもしれません。
他人はミステリー
先日、ミステリー作家の横山秀夫氏が、とあるラジオ番組にゲストとして出演していて、面白く拝聴しました。
横山氏は、僕と同い年の1957年生まれの62歳。
今では、押しも押されもせぬミステリー界の巨匠です。
僕も「クライマーズハイ」「ロクヨン」などを読みましたし、映画も観ました。
ご本人は、ミステリー作家と言われることに多少違和感を感じられておられて、ミステリーと人間ドラマを高い次元で融合させることを目指して小説を書かれておられるそうです。
僕も、横山氏の小説を読んでいて単純にミステリーと呼ぶには、人間ドラマの色合いの方が濃いな、と思っていましたが、横山氏の言葉を聞いて納得しました。
そして、横山氏の言葉で一番印象に残ったのは、
「一番のミステリーは他人」
ということです。
つまり他人を理解することは難しく、なぜ彼は、彼女はこのような言動をしたのかを考えることがミステリーだという内容のことをおっしゃっていました。
人間観察ほど面白いものはない
横山氏の言葉を聞いてやっぱり流行作家になる人は、観点が違うなと思いました。
そう言えば、以前ある作家のエッセイで、電車で気になる人を見つけると後を付けて見ると書いていました。
その作家が本当にそんなことをしたのかどうかは分かりませんし、もし本当なら問題になるかもしれません。でも小説のネタ探しとしては、相手に知られず迷惑を掛けない範囲ならいいのかもしれません。
僕も電車内で観た人をそれとなく観察して、どんな仕事をしているのかな、なんて軽く想像することがよくあります。
結婚しているかどうかは、左手の薬指を観ればわかります。
家族構成はどうなんだろうか、会社ではどうな仕事をして役職はどうなんだろうか、なんて勝手に想像してみます。
そして会社に行くと同僚たちを観察します。
これまた面白い、下手な演劇を観ているより面白いです。
お金の掛からない楽しみ
通勤の途中や職場で人間観察をすることはお金の掛からない楽しみの一つです。
37年間のサラリーマン生活はいろいろありました。
どちらかというと、大変なこと、面倒なこと、辛いこと、嫌なことの方が多かったように感じます。
よくも続けて来られたなとも思います。
上司に厳しく叱られたこともありました。会社に損害を与えそうになったこともありました。
取引先から叱責を受けたこともありました。また理不尽な指示や依頼を受けたこともありました。
よくも続けてこられたなと思います。
後輩たちからもよくやってきましたねと言われたこともあります。
答えは簡単です。それは人間観察をしてきたからです。
最後に
僕が、会社員人生を37年間続けてこられた理由は、単に鈍感だったのかもしれません。
そして厳しいことを言われたり叱責を受けたり、理不尽なことを言われた時、いつも相手のことを考えました。
この人こんな偉そうなこと言っているけど、奥さんの前では頭が上がらないだろうなとか、子供やペットの前ではメロメロなんだろうなとか、女子社員から嫌われているんだろうなとか、その人の別の顔を考えると意外と心が軽くなったものです。
今年入社した10人の新入社員の内、一人が休職扱いになっていると聞きました。
まだ入社して2ヵ月も経っていないのに残念です。
会社員生活を長く続けるコツのひとつは、人間観察をする場と思えば少しは楽になると僕は思います。