結局どっちが正解なの? パートで社会保険に加入する、しない問題

2017年7月27日

2016年10月以降にパートの勤務先で「社会保険(厚生年金保険と健康保険)に加入することになりました」と言われた方も多いと思います。
パートで働く理由としては、お子さんの学費にあてるため、生活費にあてるため、将来の老後資金準備のためなど様々ですが、共通して言えるのは、少しでもお金を得るためですよね。
そこで今回はパートで社会保険に加入したら手取りはどうなるのか? 将来の年金はどうなるのか? を見ていきたいと思います。

私も対象に? パートの方でも条件を満たせば社会保険に強制加入!

2016年の夏頃から社会保険について次のようなご相談が急激に増えました。
「パートとして働いている勤務先で次のように言われました。『2016年10月から法律が変わり、あなたも社会保険(厚生年金保険と健康保険)に加入することになりましたので事前にお知らせしておきます』と。私としては社会保険に加入してもあまり意味がないと思うのですが、加入しなければいけないのでしょうか? 」
結論から言うと、パートの方でも条件を満たせば社会保険に加入しなければなりません。条件を満たした状態のまま「私だけ社会保険には入れないでください」というお願いは残念ながら通用しません。
では、その条件とは一体どのようなものなのでしょうか? ここでおさらいしておきましょう(図1参照)。
図1の①~⑤の条件を全て満たすと、パートなどの短時間労働者の方も社会保険に強制加入することになります。逆に言うと、①~⑤の条件を1つでも満たさなければ社会保険には加入しなくてもよい、とも言えます。
●図1 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大
出典:厚生労働省 社会保険の適用拡大を一部加工
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai/

パートで社会保険に加入した場合としなかった場合で比較

パートの方が社会保険に加入したら手取りや年金はどう変わるのか? 月額9万円のパート収入で比べてみましょう(図2参照)。
社会保険に加入した場合、厚生年金保険料と健康保険料が天引きされるので年間の手取り額は約91万円。一方、社会保険に加入しなかった場合、年間の手取り額は約106万円になります。1年間社会保険に加入すると老齢厚生年金は年額で約5,800円増えますが、手取りは年額約15万円減ることになります。
厚生年金保険料を老齢厚生年金で取り戻すとすると、ざっくりとした計算ですが96,000円÷5,800円=約17年になります。
65歳から老齢厚生年金を受け取るとした場合、65歳+17年=82歳。82歳より長生きすれば元が取れると言えそうです。
今回は1年間の加入で比べてみましたが、10年加入でも20年加入でも厚生年金保険料を取り戻す年齢は82歳でほぼ同じです。
●図2 パートで社会保険に加入した場合、加入しなかった場合
※上記の金額は目安です。
※健康保険料は全国健康保険協会の保険料額表をもとに試算しています。
※加入しない場合の健康保険料は、配偶者の健康保険に加入しており、配偶者が負担するものとしています。
※住民税の均等割は考慮していません。

夫婦の手取りでも比較。結局どっちがいいの?

最後に夫婦の手取り額で比較してみましょう(図3参照)。
図3は、妻が年収100万円で社会保険に加入しなかった場合と、年収が増えて社会保険に加入した場合の手取り額で比べています。例えば年収300万円の会社員の夫と年収130万円のパート妻だった場合、妻が社会保険に加入しなかった場合と比べて年額約5万円手取りが増え、しかも妻の老齢厚生年金も増やせます。ざっくり計算ですが、妻のパート収入が130万円以上なら社会保険に加入した方が手取りも増えるので有利と言えるかもしれません。
●図3 夫婦の手取り額比較表

今回は手取り額と年金に焦点を当てて比べてみました。パートの方で社会保険に加入した方がよいのか? 加入しない方がよいのか? という問いの答えは、そのご家庭の事情によって様々であると言えそうです。
その他年金に関する記事は『我が家の年金ハウマッチ?あなたに合った調べ方、お教えいたします!』なども参考にしてみてください。
結局は他人の意見に惑わされず、ご家族とよく話し合って自分の納得がいく道を選ぶということが正解と言えそうですね。
 

この記事のライター

浜田裕也

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。社会保険労務士会の業務委託で年金相談の実務にも携わるようになり、その相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請の仕方のアドバイスには定評がある。著書に「転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話」(SB新書 著・監修)、「日本でいちばん簡単な年金の本」(洋泉社 第3章監修)がある。

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