名前はよく聞く「司法書士」。マイホームを購入した際にその存在を初めて知った人も多いのではないでしょうか。
今回は不動産登記と、その裏で地味に繰り広げられる司法書士のドタバタを、司法書士予備校の現役講師がわかりやすくお届けします。
司法書士とはどういう仕事?
そもそも「司法書士」という職業をご存知でしょうか。法律事務を行う国家資格で、マイホーム購入時や不動産投資における物件取得時には必ず司法書士が売主と買主の間や、買主と銀行の間に入って法律事務である「登記」を行います。
マイホームを買うときなどは突然決済の場に現れてすぐに立ち去ってしまうため、馴染みの無い方もいるかと思います。(その割には高額なお金を請求されて驚く方もいるかもしれません。)
ではそもそも、
①「登記」とは何なのでしょうか?
②登記は必ずしなくてはならないのでしょうか?
③また司法書士に依頼しなくてはならないのでしょうか。
順番に説明していきたいと思います。
①「登記」とは何?
突然ですが民法177条の条文です。
不動産に関する物権の得喪及び変更は不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗することは出来ない。
難しそうな文章ですが簡単に言うと、例えば他人が自宅にやってきて自分の家だと主張されたときに、登記をしておかないと他人に対して自分の家であることを証明できないということです。
言い方を変えると、登記とは「不動産の保険」という言い方が出来ます。
不動産という高額資産の所有権などを国家が保障し、司法書士がその法律手続きをする専門家ということになります。
②登記は必ずしなくてはならないのか?
法律上は任意になっていますが、実際には不動産売買の現場で登記をしないと物件の購入手続きができません。多分、登記をしない!と言ったら不動産業者は物件を売ってくれなくなるし、銀行はお金の融資をしてくれません。(笑)
取引の安全を守るために商習慣上登記は必ず行うようになっています。
③司法書士に依頼しなくても自分でできる?
手数料がかかるので、司法書士に依頼しないで、自分で登記をしたいと考える方がいるかもしれませんが、買主や融資を受ける人が単独で登記をすることは出来ません。
登記をするためには売主・買主、お金の貸し手・借り手双方から重要な書類を集めます。単独で登記を行うことを認めてしまうと、売主に売る意思が無い不動産がいつの間にか買主に移ってしまったり、お金を貰わないまま売主から買主に不動産の名義が移ってしまったり、お金を貸したにもかかわらず、銀行側の融資担保のための抵当権が入っていないなど様々なトラブルが想定されます。
このように不動産の売主と買主、お金を借りる人と貸す人というように不動産売買においては利害関係の対立する両者が取引をするので、不動産の権利関係を保障するために中立で客観的な第三者に登記手続きを依頼する必要性が出てくるため、司法書士が双方の書類を集めて法律上の瑕疵がないかを確認した上で、登記の代理手続きを行うことになります。
不動産決済の現場では、司法書士の重要書類確認後の決済GOサインによって何千万円ものお金が動くので、とても緊張しています。
通常不動産決済は売主にお金が入り、買主は物件が手に入るおめでたい和やかな席とされていますが、司法書士は実は一人で相当気を揉んでいます。(笑)
ちなみに決済が終わった後は大急ぎで「法務局」と言う登記を申請する官公庁に向かって、バタバタとしています。結構泥臭い仕事をしています。
ここでしっかりと登記の手続きを行うことで、登記簿謄本にも今回の登記内容が反映され、第3者に対して対象の不動産が買主に引き渡されたことを証明出来るようになります。
決済の場に突然さっと現れて高額な手数料を要求されるため、驚かれる方もいるかと思いますが、内訳をみると約半分は登録免許税といって税金になっているはずなので、確認してみてくださいね。