私は京都が好きでいつ訪れても心が落ちつきます。歴史ある神社・寺院、ため息が出るほど美しい日本庭園。お寺に参拝した後ゆったりとした気持ちで、無になってお庭を眺めていると自然と心が澄んでいくように感じます。
お寺で無の心と言えば精神統一をする「座禅」が思い浮かびます。最近「座禅」がブームとも言われており、好きな京都で体験したくなり、最も古い禅寺、建仁寺にて毎月第2日曜日にお行われる座禅会に参加してきました。
座禅とは
「座禅」は座ったまま長時間ジッとする修行法で、途中で動くと後ろから「バチン!」と板でたたかれるシーンを知っている人も多いのではないでしょうか。では、この座禅とは一体何のために行うのでしょう。そしてどのような効果があるのでしょうか。まずは基本の姿勢から学びました。
姿勢を整える
・足の組み方―あぐらの状態から右足を左の太ももの付け根にのせる。次に左足を右のふとももの付け根にのせる。ですが、どうしても左足をのせられない。静けさの中、ごそごそと何度も体を動かすのはガサツなことと、片足だけの半跏趺坐(はんかふざ)に整えました。
・手の組み方―まず手のひらを上に向けて左の手のひらを右の手もひらに上に重ね、両手の親指で輪をつくります。注意することは親指同士が軽く触れるように。
・姿勢―上半身はまっすぐにして顎を引き、眼は閉じず視線を1メートル前方の地上に落とします。こうすると自然と瞼が半分閉じた状態になり、これを半眼といいます。
私は、この注意事項を知らず、瞑想のように目をしっかり閉じてしまいました。これがのちに恐怖となるとは思いませんでした。
呼吸と心を調える
基本の姿勢が調えば次は呼吸です。それは腹式呼吸。手を置いている下腹に意識を向け、深々と吸い込んだ息を出来るだけ時間をかけてゆっくり吐き出します。その時に下腹に力が入るように、徐々に静かな呼吸に調えて、口ではなく鼻で呼吸をする。最後に心を調えます。静かなところで座っていると雑念が次々にと起きてきます。
この雑念を追い払い心を調える方法として「数息観」(すうそくかん)があります。
これは吐き出す息の回数を心の中でひたすら数えていく集中法。「ひとーつ」の「つ」のところで息を吸い、同様に「ふたーつ」「みーっつ」と声を出さず心に数だけおきます。
十まで数えたところで、また一つに戻ります。確かに数えることに上手く集中できれば他の事を考えている余裕はないかと思えました。いよいよ、リーンと乾いた鐘の音とともに座禅開始です。うまくいきますでしょうか。
指導層の気配に怯える
小さな座布団が間隔なく敷き詰められ多くの人が座禅会に参加されていますが、座禅が始まると人の気配が消えたかのような静けさになります。その中で「ひとーつ」と数を数えてみますが、数えるリズムが狂ったり、ふと気が付くとやめていたりと、「あれ?私今何か考え事してたっけ?」と全く集中できません。
そうこうしていると遠くの方でパチンパチンと警策を打った音が聞こえてきます。その時やっと、「あれって痛いのか?」と不安を覚えたのです。
というのも、私は座禅について全く調べもせずに当日を迎え見よう見まねで姿勢をとったのですが、半眼ではなく、瞼を閉じてしまい暗闇の中にいたのです。「どうやったら自分が叩かれるのが分かるのか」「怖い」と感じたら肩に力が入るのを感じました。「これはいけない。集中しなければ」と数をひたすら数えました。
だんだん警策を打つ音が大きくなります。「あかん近くに来ている。怖い」すると一瞬目の前の暗闇がより一層深くなり、指導層の気配を感じたのです。叩かれたくないと思うと、自然に瞼がピクピクせわしなく瞬きを始めました。
私は「怖い」という雑念を払いのけ叩かれたくない一心で姿勢を保ち数を数えました。すると、すぐそばで警策の乾いた音がしたかと思うとゆっくりと指導層の気配は私の傍から消えました。
しばらく後に、鐘の音が鳴り拍子木の打つ音を合図に、20分の座禅は「恐怖」の中で終わりました。2回目は腹をくくり、その時がくれば仕方ないと考え、数を数える事に集中できたと思います。こうして20分×2回の座禅は終わりました。
座禅で得たもの
座禅をすると、無になり、邪念が取り払われ、なにか心にストンと心に落ちるような物を得る事が出来るのか期待をしました。が、全く何も起きなかった。ただひたすら、呼吸を調え、数を数えていただけです。私の準備不足から暗闇の恐怖を知ったことは笑い話に出来そうですが。
きっと、座禅では何かを求めたり、得たりするものではなく、無心になって座り続けることに意味があるのかもしれません。忙しい現代社会でだは、普段静けさの中で心を落ち着かせる時間を持つことはまずないと思います。だからこそ、なにもしない時間を体感することで、自分は何を感じるのか確かめるのもいいかもしれません。
全国各地に禅寺はあると思います。是非お近くの禅寺で体験してみてはいかがでしょう。私も次回は半眼にてチャレンジしてみたいと思います。