どういう生き方をして、どういう最期を迎えていくのか。のぞむあり方は、人それぞれ違うことでしょう。
そして、身近な人を見送る立場になったとき、その意志を尊重していくということは、簡単なことではないようです。
そんな経験を経て僧侶となった玉置妙憂著『まずは、あなたのコップを満たしましょう』 より、最愛の人の死の向き合い方と、仏教の教えをベースにした自分自身を大切にする生き方をご紹介します。
本人の望む「逝き方」がベスト
夫をわが家で看取ってから、はや7年が経ちました。夫は当時62歳、「がん」でした。自宅で夫を看病した時期は、2人の息子の母親として、また病床にある夫の妻として、また現役の看護師として。「ひとり3役」で駆け抜けた、人生でもっとも目まぐるしい、大変な時期でした。
<2ページより引用>
「現役の看護師」である著者は、高野山真言宗の女性僧侶でもあります。ひとり3役でがんを患った夫を「自然死」という形で見送り、その後、思うところあって僧侶となったのだといいます。
「積極的ながん治療を選ばなかった夫は、まるで樹木がゆっくりと枯れていくように、おだやかに、美しく、旅立っていきました。」と著者は語ります。
カメラマンであった夫の看取りにまつわる体験は、著者が看護師としてこれまで西洋医学で培った常識をガラリと覆すようなものであったのだとか。
たとえば、入院して点滴を続けていると余分な水分が体にたまりやすいため、亡くなったときに遺体のエンゼルケアが必要です。しかし、夫は必要なとき以外は水分を摂らなかったため、「ほどよくドライ」な遺体であったのだといいます。
〝西洋医学漬け〟だった著者の価値観は、そこでがらっと変わったのだとか。
とはいえ、何が何でも自然死を推奨したいというわけではないと著者はいいます。あくまでも、本人の望む「逝き方」がベストであるということ。大事な家族の意志を尊重し、寄り添い続けた著者だからこそ、心に染みるような言葉です。
まずは自分自身のコップを幸せで満たす
「自分のことは後回しにして、まずは人のために全力を尽くさなければ」そう思い込んでいる人は多いものです。中略
「家族のため」「生活のため」「会社のため」と自分に言い聞かせ続け、無意識に頑張りすぎていることが多いものです。
もしかして、あなたもそうではありませんか?
<19ページより引用>
医療や福祉の仕事に就いている人はなおさらですが、どんな職業・立場にあったとしても、プロ根性で自分のことは二の次に。プライベートな時間を削って、他人のお世話をすることに生きがいを感じている人は意外と多いものです。
しかし、頑張りすぎる人ほど、いつの間にか離職しているというケースが多いと著者はいいます。行き過ぎた貢献に疲れて自分をすり減らし、燃え尽きてしまった結果であるといえるようです。
この先、何年も頑張り続ける必要があるのだとしたら、まずは自分自身の心を幸せで満たすことが大事だと著者はいいます。それにしても、このように頑張りすぎてしまう人が、日本の社会にはなぜこんなにも多いのでしょうか。
その理由として、「あなたも少し休んでいいよ」「頑張ってくれるのはありがたいけれど、あなた自身のことも大切にしてね」とアドバイスしてくれる人が、今の日本に少ないからであると著者は語ります。
仏教には「自分のための利益」である「自利」と、「人のための利益」である「利他」という言葉があるのだとか。この二つを「二利」といい、「自利」も「利他」も同じように大切であることが説かれているのだといいます。
苦しい状況をただ耐え忍ぶのではなく、自分の心を幸せで満たすように努力をすることも大切なこと。人のためにと心から思える自分になれるように、私たちはもっと自分自身を大切にしてあげなくてはならないのかもしれません。
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「過去」にねじれた糸は「今」解けばいい
長い人生で、どんな人でも不幸な出来事に見舞われてしまうということはあるものです。その原因を過去に遡って後悔したり、自分や誰かを責めてしまうことがあります。
著者は、「過去」にねじれた糸は、「今」解けばいいのだと語ります。一度起こってしまった不幸な出来事を「なかったこと」にはできなくても、「今」の自分の心を満たしていくことで過去を修正。
明るい未来を予感しながら、「今」をしっかり見つめて変えていく、そんな生き方をしていきたいものです。
タイトル: まずは、あなたのコップを満たしましょう
著者:玉置妙憂
発行: 飛鳥新社
定価:1,188円(税込)